「何でもない」
俺は咄嗟に一歩下がった。
「…そ。ならいいけど」
フランカは口には出さないものの、やはり俺の態度が不満らしい。
俺がフランカを苦手な理由は、実はもう一つある。似ているのだ。顔はあまり似ていないが、彼女の深い碧眼は、アリアを思い出させる。
−そう、フランカはアリアの姉なのだ。そういえば、アリアも意志が強い澄んだ眼をしていた。彼女達の雰囲気が周りと異なるのは、唯一血の繋がりがあったからだろうか。まあ、俺には関係ないが。
しかし、俺は思う。アリアの死を知らされても、フランカは黙ってうつむき、何も言わなかった。気にしていないふりをして、腹の底で俺を恨んでいるのではないかと。すぐ側にいながら、助けられなかった無力な俺を。
フランカの何を考えているかわからない明るく深い瞳は、時々俺をとてつもなく不安にさせる。
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