だがこれまで無くて困ったことはなかったので、“別に必要ないかな?”などと思い買っていなかった。
今はその選択が悔やまれる。
しかし無いものは仕方がない。
公衆電話でも探すしかないだろう。
近年、携帯電話の普及で数は減っているが、大きな公園や商店に行けばあるだろう。
そう思い周囲を見回すが…どうやらこの辺りは住宅地のようだ。
近くに商店などがある様子はない。
かといって更に歩き回って探すのもまた迷いそうでイヤだった。
(いっそこの辺の家で電話を借りて…それが出来るなら直接学校までの道を聞いたほうが早いか…。)
鳥花は知らない他人と話すのが苦手だった。
小さい頃から人見知りが激しい。
とてもではないが、知らない家を訪ねて道を訊くなんてできない。
通行人でもいれば、なけなしの勇気を出して道を訊く事も出来るのだが…先ほどから通行人も車すら通らない。
「はぁ…どうしよう…。」打つ手がない。
やはりいずれかの家を訪ねて…。
『カタンッ』
その時、前方から音が聞こえ、鳥花はうつむいていた顔をあげた。
道路を挟んだ反対側、少し先にある一件の住宅の玄関が開き、女性がひとり出てきた。