鳥花には、その30歳くらいの女性が、まるで女神のように見えた。
あの人に道を聞けばいい。まさに天の助け。
ようやく希望の光が見え、鳥花は安心し…油断した。
「あと1分…これは遅刻確定かな?」
後ろで水葉が諦めたように苦笑するのがわかる。
「まだ…まだっ!…諦めたら…終わり…だよ!」
真紅は苦しい呼吸の中、なんとか声をだした。
もう数度目の登り。
スピードは落ち、真紅の息もあがっていた。
“能力者”には、それぞれ固有の能力の他に、共通した能力もある。
それが、体力・筋力・肉体強度・動体視力・回復力・治癒力・感覚機能の強化だ。
もちろんこれにも個人差があり、例えば真紅の場合、体力・筋力は瞬間的には凄まじい力を発揮するが、持久力はない。
もう足と肺が悲鳴をあげていた。
「…んっっっしょっと!」
なんとか坂を登り切り、下りに入る。
「ふぅ〜…。」
この坂を下ればあとは平坦な道だ。
飛ばせば予鈴は無理でもホームルームには間に合うかもしれない。