そう、運命の出会いだ。
なにか、感じるものがあった。
それは、そのときには知る由もなかった。
彼氏は、私が新しい仕事を始めるのが気に入らなかったみたいで。
冷たく、ろくに話を聞こうとしなくなった。
そんな折、新しいバイト先という居場所を見つけてしまった。
私はすごく楽しかった。
社員の人は、店長を初め、みんなそれぞれにこだわりを持って、熱かった。
そんな人たちに育てられてきた先輩たち。
その中で、私はうまく馴染んでいった。
仕事も、怒られることなんてなかった。
とくに、ホールの社員さんには気に入られてるのかな?とも思っていた。
私のシフトは、昼間の準備から、営業時間から、金土のみの深夜営業時間まで、様々だった。
そして、必ずと言っていいほど、『彼』も一緒だった。
−ホールの社員さん。
嬉しかったことは、話して分け合い、失敗やつらかったことも、受け止めてくれた。
いつからか、彼に会う為にバイトに行ってた。
つらくあたられる彼氏に嫌気がさし、怒鳴りあってケンカした日も、彼には会えた。
会えたことが、癒しだった。
そう、いつの間にか、彼を、上司として尊敬し、兄のように慕い、恋人のように必要としていた。
気付いたときには、もうどうしようもなかった。
もっと仲良くなれれば。
もっと理解出来るなら。
もっと役に立てるなら。
そんな風に思って、そばにいたのに。
彼の一挙一動が私の心を掻き乱し、一言一句が胸に刻まれる。
その度に、消えてなくなりたいと思った。
彼には、恋人がいた。
私は彼氏と別れた。
あの時のケンカから、ふたりの心は近付こうとしなかった。
最後は、本当にあっけなかった。
多少の虚無感はあったけれど、後悔はなかった。
より一層、一生懸命に仕事のことを考えれると思ったから。
「若いから、もっといいヤツはいっぱいいるから。飲もうか!」
さりげなくくれた言葉。
案外あっさりしてたはずなのに、涙が出た。
それは、彼の優しさが胸に沁みたがら。
もう、夏が間近に迫っていた。
とても忙しかった1日の、深夜明けの朝だった。