8帖ワンルームの部屋に彼女は座っている。壁にもたれかかって、さっきから何度も携帯電話をチェックしている。
(もう11時過ぎてるのに、連絡くらいしてよね! アタシ達慣れすぎちゃったのかな…)
最近、“仕事が忙しいから”と毎日帰りが遅い彼に、少々不満気味だったが、仕事だからしょうがないと自分に言いきかせていた。
(明日は、早く帰ってきてもらおぅっと!)
そう思っていると玄関の鍵が“ガチャ”とあいた。
「もぅ、帰る前に電話くらいしてよね!」
「ごめん!もう寝てたら悪いなって思って」
「もぅ、分かったから早くお風呂入ってご飯食べて、寝よっ!」
彼は、どんなに帰りが遅くなっても晩ごはんも食べずに待っている彼女を、とても愛しく思っていた。
「明日は、なるべく早く帰ってきてね」
「分かってるよ」
8帖ワンルームの部屋に彼女は座っていた。目は真っ赤にはれ、腕には無数の傷と血が流れていた。
彼は、まだ帰って来ない。昼間一緒にいたあの女といる。絶対にそうだ。 どうして・・・今日は、アタシの誕生日だよ。早く帰って来てって、わかったって言ってくれたのに!
その時、玄関の鍵があく音がした。