若い弾けるような声とは対照的な、暗い声が、ロフト状になっている狭い二階部分から聞こえてきた。
「ソン、冷めるやんか!はよ、しいやぁ!」
下から急かす声が聞こえてくるのも、お構いなしに、ソンスンはパソコンをいじっていた。
後ろに置いてある銀色の液晶テレビからは、やかましくテロの続報が流れていた。
ソンスンの周りを囲むように、棟方の写真や棟方を乗せるハイヤーのルート予想図などが散乱していて、その傍らには、依頼遂行を物語る、殺害報告書の下書きが数枚散らばっていた。
ソンスンの表情は険しかった。
メールボックスには、棟方の暗殺を依頼する内容のメールが数十件送られて来ていたが、その大半は、依頼というよりも、“願い”に近かった。
『棟方を殺りたい』
その気持ちが、昨日で倍増した。
「ソン!」
梯子を登りながら、きつい大阪弁で自分を呼ぶ声が近づいて来て、振り向くと、そこには、普段なら凛とした顔だが、今は鬼の形相のソルミがいた。
「ちょっと!呼んだらはよ、降りといでえや!トースト冷めてまうやろ!」
「ごめん」
素直に謝っておいた方が無難そうだったので、ソンスンは申し訳なさそうに謝った。