2004年12月10日
アタシは何者かに、両目を千切られた。
───2005年12月10日
私の目がなくなってから、一年がたった。私はその事を母に言おうかと迷ったが、やめた。そして「おやすみなさい」と母に言った。母からの返事はなかった。そしてその日から、私の耳には奇妙な泣き声が聞こえるようになった。
12月20日
私の足元で泣く何者かは、日を増すごとに私の体に触れたりした。しかしその横で、私の体を触るのを止めさせようとする、もう一人の何者かの気配にも私は気付いた。
12月22日
もう一人の何者かが、私の足を持ち、私を引きずった。目がない私は、それが誰か、一体何処へ連れていくつもりなのか分からなかったけど、私の体が感じとった感触では、そのもう一人の何者かは、私を玄関へ連れていこうとしているようである。そしていつも泣いている何者かが、それを止めているようである。
12月25日
私はそのもう一人の何者かに、足を千切られた。その瞬間、私の目を千切った犯人と、こいつが同一人物であると気付いた。そいつは私の母の父である。そして、それを泣きながら止めていたのが、私の母である。
──母は優しい。
人形のくせに感情を持っている私を大事にしてくれていたのだから。だけど母さん…ごめんね………。
「どうしたんだい?」「ハパ……ハパがいつも捨てろっていってたお人形、もう捨てていいよ。」
「………?そうかい。お前がそう思ってくれてハパは嬉しいよ、あんな奇妙な人形、捨てるにすぎない。」
(───馬鹿な奴………その人形はもう、あんたの娘の体の中、あんたの娘は、その人形の体の中なのに)
───人形の顔には、一筋の涙の後が残っていた。親に捨てられる悲しさと、大事にしていた人形に裏切られたという悲しみのこもった、一筋の涙が………。