パタパタと出掛ける準備をしているナオを見て、サトルは聞いた。
「どしたの?珍しく学校でも行く気?」
「うん。たまには行かないとさ、マジで除籍されそうだしね〜。大学生も意外に大変っしょ?!」
「…。てか、お前。全然学校行ってねーくせに、えらそーに言うなっつーの!」
そう言いながらも笑っているサトルを見て、あたしにちゃんと学校に行ってもらいたいんだろうなって何となく思った。
二ヶ月ぶりの大学はとても閑散としていて、そこに活気があるようには見えなかった。
所詮、二流の私大なんてこんなものなのだろう。ナオはこの大学を選んだコトを少しだけ後悔した。高校の頃は、もっとステキな大学ライフを想像していた。 想像と現実のギャップは大きすぎる。
後ろからナオを呼ぶ声がする。
あつしだ。
「おー。珍しく学校来とるやん。何かあったとや?」
ナオは基本的に友達が少ない。そんな中であつしは、唯一ナオが気心の知れた男友達である。
「何もないっちゃけど、何となく来てみたと。」
ふたりとも同じ福岡出身なので、ナオもついつい博多弁になってしまう。
「何や、それ!お前、今日あいとる?」
手帳の間にはさまっているバイトのシフトを確認し、
「バイト入っとらんけん、何も予定ないっちゃけど、何?」
「あんなー、コンパあるんやけど、女足りないんよ。お前、人数合わせに来ん?」
少し考えた。
「あたし他の女の子達と友達じゃないけど、いいと?」
「構わんって。今回、俺幹事やし。めっちゃ先輩達に言われとって、女の子足りんかったら殺されるって!」
「そーなん?なら、行こっかな〜。場所と時間決まったら教えてや。」
「おっけー!後から連絡するわ。じゃーな。」
あつしに手を振りながら、コンパという響きに胸が高鳴っていた。実は、コンパに行ったことがナイのだ。
常に男に不自由はなかったので、そういうことに今まで一切興味がなかった。しかし、いざ行くとなると、服やら髪型やらやたらと気になる。女心とは本当にわけがわからないものだ。
一人でいろいろと悶々と考えていると、サトルからの着信が鳴った。
何だか嫌な予感がする。
ナオは携帯の電源を切った。