私の友達は黒猫だけ。
つやつや黒光りして なつっこそうに寄ってくる
いつもしゃがんで撫でながら私は言うの。
[誰も私のことをシらないの
きっとお前もそう
ほんとの私はわからないんだ]
学校に行って笑ってるワタシも
家で両親と話してるワタシも
全部偽者。
みんなは気付いてないけど。
ほんとにあんな話で笑ってると思ってる?
ほんとの私はあんたたちみたいに馬鹿じゃないんだから。
私は
もっともっとー………
ある日一緒にいたグループの子が突然転校してった。
先生は話そうとしなかったけど
噂好きの子が楽しそうに話してくれた。
父親が暴力振るって母親出てって、
その後父親酒浸りになって町で人殴って大怪我させたんだって。
今は捕まっててそのまま刑務所に行くみたいだって。
その子は親戚のところに預けられるらしい。
家が荒れていく間
まわりに対して
何も思ってなかったのかな。
それとも
もしかして
あなたも
私を同じふうに見てたの?
こいつは何も知らない、ほんとの私を知らないんだって?
その日黒猫は可愛い白猫と歩いてた。
仲良さそうに
楽しそうに。
私は黒猫だったんだ。
太陽の下で
自分は真っ黒、誰にも見えないって思ってた
バカな黒猫。
誰にもわからないってまわりから目を背けて
まわりにいる猫にも気付かなかった。
黒猫はフッと笑うと
尻尾を振って
駆けていった。