新紀元0世紀。
度重なる天変地異の果てに起こった小惑星の衝突に、人類は壊滅的な打撃を受けていた。
あまりの窮状をみかねた神仙界の住人達は、異界と人間界の垣根を取り払い、精霊達を人類の救助のために差し向けていた。
これは、そんな時代の物語である。
ドラゴン
「いやぁ、今日は君がいてくれて助かったよ、ビアンカ。 僕一人じゃこれだけの量は運べやしないからね」
山際晋は、傍らに並んで歩いていた白人娘に笑顔を向ける。
彼の背にはリュック、そして両手には大きな袋をぶら下げていた。
ビアンカは、彼に数倍する巨大な包みをかついでいる。
彼女、ビアンカは白虎の化身であった。
人類とは比ぶべくもない筋力を有している。
「お手伝いが出来てうれしいよ。 あのさ、晋は何でドラゴンって呼ばれてんの? 人間なのに」
「それはね……今からお目にかけるとするよ」
晋は食料の詰まった袋とリュックを地面におろす。
二人はいつのまにか、大勢のボロをまとった集団に包囲されていた。
働いて食を得ようとせず、他者から奪おうと言う連中に違いなかった。
「ここは僕に任せて」
晋は言い置くと、ゆるやかな動きで敵に向かっていった。