聞き慣れない言葉だった。
『広東語だ!』
ソンスンが相手の叫ぶ言語に意識を取られた時、ソルミが叫んだ。
「ソン!手榴弾や!」
ハッとした時、広東語を話す、アジア系の男が倒れながらも、手榴弾を持ち上げてピンを抜く直前だった。
ソンスンは慌てて、来た方向へ駆け出して、ソルミに向かって叫んだ。
「伏せろーっ!」
叫んだソンスンもソルミが伏せたパトカーの陰に飛び込んだ。
ドンッ!!
独特の重低音と振動、そして爆風が、周囲と二人を襲った。
「ソルミっ!ケガはないか?」
「大丈夫。それより、怖いわ!こいつら何者なんや?」
ソンスンは無言で首を横に振り、ソルミを抱き寄せた。
「わからない。ただ、普通の奴等ではないし、北や日本の仕業でもないかも知れないな。」
ソンスンは、先程見つけた、クルアーン(コーラン)をポケットから取り出した。
『トルコ系のアメリカ人、クルアーン(コーラン)、広東語を話すアジア系の男・・・
何者なんだ?』
ソンスンとソルミは、まだ他に、“見えない敵”がいる場合を考えて、人混みを選んだ。
ウンジュの事が少し気掛かりだった。
『あいつは無事だったのか?』