ソルミはそわそわしながら、あちこち移動してみたり、座ってみたりと、全く落ち着かなかった。
逆に、ソンスンは、閉ざされたシャッターの手前で、不審者が現れたら、いつでも発砲できるように、拳銃を握って立ったままでいた。
昼過ぎに差し掛かった頃、シャッターをノックする、来客者が現れた。
ウンジュの生還を願うソルミは、一目散にシャッターに駆け寄ったが、用心棒役のソンスンに制止された。
そのまま、シャッターの新聞受けからソンスンが謎の来客者に尋ねた。
「誰?」
すると、聞き慣れない声だが、訛のない綺麗な韓国語で返事が帰ってきた。
「ノ・チャンホと言います。こちらに、イ・ウンジュさんの妹君、イ・ソルミさん、それと・・・
“ご友人”のハン・ソンスンさんはおられますか?」
“ご友人”という、含みのある言い回しも妙に引っかかったが、何よりも、自分自身の存在が自分の知りうる人間以外に知られている!
ソンスンは、不信感を強めて、再び訊いた。
「何者だ?」
すると、一瞬の間の後に、意外な言葉が出てきた。
「“本店の人間”と言えば、判ってもらえるんじゃないかな?」
ソンスンは、驚いて目を見開いた。