雷神
「ただいま」
門の内に食料の入った袋を下ろしながら、山際晋とビアンカは一息ついた。
「それ、解かないと人力じゃ運べそうにないね」
ビアンカの担いでいた荷物を指差して晋が笑う。
50キロ程の穀物の麻袋を十袋にまとめ、荒縄でくくりつけてあるという代物で、そばかすのある愛敬溢れる顔立ちのこの華奢な娘が、軽がると肩に乗せて歩く光景は、すれ違う者達の注目を浴びていた。
「そうね」
気軽に言うと、ビアンカは素手で荒縄をねじ切った。
「あ、おにーちゃんおねーちゃんお帰りーっ」
玄関まで顔を出した子供達が数人、駆け寄ってくる。
「サンダー、留守番すまなかったな」
晋は子供達の背後から現れた長身の男に、声をかけていた。
サンダーと呼ばれた男は、雷の精霊である。
神界から降臨した彼は、『人類の未来』を守る使命を帯びていた。