クラス替えから3ヶ月たち、ようやくクラス全体が和やかムードになってきた。
ある日の放課後、丁度俺と楓が日直の仕事があった時だった。クラスには5、6人の生徒が残っており、好きな人や気が合わない人などをテーマにした中学生にはありふれた内容の話し合いをしていた。すると、その中の女子の一人で塚原 巴と名乗る女子が
「ねぇ!いまから好きな人のイニシャルを黒板に書かない?」
全くどうでもいいことを発言しだした。(その場にいたメンバーは乗り気だったが)第一黒板に書かれたら日直の仕事がまた増えるだけだ。頼むからやめてくれと言ったが、言い切る前には既にチョークを手に持って、イニシャルを書き始めていた。(皆こんなにも好きな人を、下手すりゃばれるような事をするのか)と愕然としている俺と楓をみた塚原は
「あんたたちも参加しなよ。」
すかさず俺は
「嫌だよ、黒板で披露するような事でもねぇし。如月さんだって迷惑だよ。」
とさっきまで楓がいた方を見たが、楓はかなり乗り気でメンバーの一員となっていた。
「おもしろそうじゃん。梶君もやってみない?」楓に言われるとさすがに迷った。ここで書いたらばれる。絶対に。
ものすごく悩んだ結果、空気を読んで書くことにした。(情ない
皆いろいろあった。全然予想がつかないイニシャルだった。ただ一つを除いて…
「s・k…これって如月さんが書いたやつだよな。」
「うん…そうだよ…」
なにかしら恥ずかしそうにしていたが、その仕草からもう答が分かってしまった。
俺だ…。
答がわかれば怖い物はない!俺はハッキリと書いた。
k・k
「え?何このパターン。もしかしてあんたたち両想いだったの?」
塚原は目を真丸にさせて、俺たちになげかけた。まわりの奴等もヒューヒューなどと言っておだてていたが、そんなものはちっとも気にしなかった。塚原が言ったように、俺たちは両想いだったのだ。
赤い頬をした楓は夕日を浴びてさらに赤みを増していた。楓からみると俺もそうだったかもしれない。
「と、とりあえずよろしくな!」
「うん…一緒に帰ろ?」俺は今でもこの場面を忘れない。というか忘れられない。
まるで、夏に春が訪れたような…そんな気分だった。