霊峰ビルフォレストの麓にあるごく普通の街アルダビスト。
人口は130万人、大陸間の流通産業を主体に栄えた商業の街。
服飾関係の会社が多く、流行の先端でもあり、働く女性が活躍する活気あるあ街だ。
そんなごく平穏であるはずの街が今、とある恐怖におののいていた…
「連続爆弾通り魔事件」
当初、アルダビストに本社のある服飾専門小売販売会社ブラックラック商会の小売店や支店内の器物損壊による嫌がらせ行為と思われていたこの事件。
つい一ヶ月前に死者が出た事で急転する。
以降、職業年齢問わず女性ばかりが被害に遭い、尊い命を失った。
ライバル会社の妨害行為と見ていた警察は、捜査を一時立て直し、一人の女性警官の囮捜査により犯人を追い詰める。が、返り討ちにあい、現状にいたる。
経緯や思惑とは別に、住民に恐怖を与えるには十分な事件であり、犯人の目的も意図も図り知れないのであってはそれはより一層である。
何はともあれ、平和だったはずの街が、今殺伐とした空気に包まれているのが確かな事実だった。
人が溢れていた、真昼のメインストリートには数える程の人しか歩いていない。
皆仕事に追われ事件所ではない人達ばかりであった。中には女性の姿も見受けられる。
正に男勝りのキャリアウーマンなのだろう。
それが犯人にとっては恰好の標的であるとも知らずに…
黒いスーツに白のシャツ、ネクタイこそしていないが、いかにも一流の商社マンといった風ないで立ちで男はいた。
ネクタイね代わりにどでかいペンダントをぶら下げて、何やら観察をしている。
街行く女性ばかりに目をやり、時々奇しく微笑む。
何を隠そう彼が今、巷を騒がす「爆弾通り魔」その人なのである。
白昼堂々と街のど真ん中に佇む彼を誰がその凶悪犯だと認められるか。
そんな人々の油断に彼は「爆弾」を仕掛けて来た。
これが初めてではない、何度も、何度も…
しかし、今日に限って何か違和感を感じた。
余りにも無防備すぎる。
仮にも連日連夜ニュースでとりだたされるような事件が起きている街の中を一人で歩く馬鹿はいない。
数人しか見受けられない歩行者も、必ず二人以上で並んでいた。
だが一人だけ、たった一人で歩く女性がいた。
正直、目を疑った。
しかしその時、互いにアタリをつけたのだ。