自宅へと車で向かう私の視界に突如現れた物体が何なのか知るまでにそう時間はかからなかった。
『ねぇ〜今日何の日か覚えてる?』
さおりは敦に念を押すように問いかけた。
「あぁ!大丈夫!7時までには帰れるよ!」
敦はさおりの髪をクシャクシャしながら頭を撫でた。
今日は女の子なら誰しもが幸せを全身に溢れ出させる【記念日】である。
同棲三年目を迎える【記念日】。
さおりには唯一気になる敦の元カノの存在があった。時間構わずメールや電話をかけてくる彼女を、面倒だと言いながらも必ず対応している敦。軽い嫉妬が芽生えていた。
夕方(わりぃ!1時間位遅くなるわ)と言う敦からのメール。
咄嗟に夕べの元カノとの(なんで迎えにオレが行かなきゃなんないわけ?)と言う電話のやりとりがよみがえり、さおりを敦の会社へと向かわせた。
敦の同僚に(あれ?さおりちゃんどしたの?急な残業でさぁ。敦のヤツ、プレゼントとプロポーズばっちり決めてやる!って‥ヤベっ聞かなかった事に‥)
最後まで話を聞かずにさおりは自宅へと車を走らせた。
『バカだあたし‥』
視界に現れた物体は事故で飛ばされた、バイクだ‥
その瞬間、あたしのスベテが終わった。
『敦‥ゴメン‥』