ヤス#180
ヤスの身元はすぐに割れた。
崎戸島の周囲は自衛隊に包囲され、ヘリがアブのように飛び交っている。
島民は戦争の始まりと思い込み、恐怖におののいた。
料亭・香月を特殊部隊が占拠した。だが、当のヤスの所在は一向にわからなかった。
「一体、どういう事よ!私達を拉致するなんて…なんとか言いなさいよ!
恭子に問い詰められた自衛官は苦虫を噛み潰した表情をしている。それも、仕方の無い事だった。理由など聞かされていないのだ。
(ヤスと言う青年を確保せよ)ただ、それだけだった。
泰三と弘子は軟禁状態で尋問を繰り返されていた。だが、ヤス達からは崎戸島に行った まま、何の連絡もないのだ。弘子は疲れ切っていた。
そんな中、竹内親分が香月に戻ってきた。親分はすぐに確保された。
竹内親分…つまり、ギ…は、その気になれば自衛隊の一個師団など取るに足らない。だが、指揮官である大黒から事の事情を聞かされ、軍用ヘリで首相官邸に向かった。