教室の扉は開いている。
間に合った−−−
そして二人は廊下を走る勢いのまま教室に駆け込んだ。完全に息があがってしまっていた。その時だった。
「こらっ！」
その声にびっくりして教壇の方を見ると担任の佐藤 静子（しずこ）が立っていた。
しかも六年三組のクラスの皆は全員きちんと席に座っている。それが二人にとって嫌味にほかならなかった。
「あなたたち、今日は朝礼があるの知ってたでしょう。だから１０分前には教室で出席をとるからって言わなかった？」
「･･･そういえば、そうだったかな。」
と渉は渋々答えた。
「まあいいわ。じゃあ出席とるから、早く座りなさい。」
二人は小さく頭を下げて互いの席に向かった。クラスからはクスクスと笑いが起きていた。
別にウケを狙った訳じゃねぇのに････
魁はふと頭の中で愚痴をこぼした。そして、渉もそう思っているんだろうな、と窓際の席に座る彼の方を見た。
渉は窓の外の景色を憂鬱そうに頬杖をついて見ている。
「じゃあ、５分前になったから皆廊下に男女二列に背の順で並んで下さい。」
そんな佐藤先生の一声でクラスの皆は廊下に歩き出した。
魁も席を立ち、それに続いた。
しかし渉はまだ窓の外を眺めていた。
それが彼の好きな眺めなのかもしれないと魁は思った。
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