今日は宿題もできてハッピーな気分で授業を受けている。
自分のなかには、すごい充実感と満足感でいっぱいだ。
突然、先生は聞いてきた。
『あんた高校はどこ行きたいの?』
先生は『あんた』と人のことを言う。
『小山にあたしは行く気だよ』
すごく行きたいわけじゃないけど、今の内申点や成績ではここ位が妥当なんでいつもそう言ってる。
高いところ言って無理とか言われるとうざいし。
『は?ほんとにそこに行きたいの?』
この人は何を言いだすんだ。あたしが行きたいって言ってるのに。
『そうだよ。行きたいよ。』
『なんで嘘つくの?子供(ガキ)の嘘くらいわかるよ。目が適当だからね。ほんとはどこ行きたいの?』
『…』
なんか黙ってしまった。
『高いところを言って笑われたり、無理とか言われるのが嫌だから言わないんじゃないの?』
なんでこの人はわかるんだろう。
『自分の行きたいところくらい胸はって言えよ。言えないような環境を作ってる大人も悪いけどもっと自分に自信持ちな。』
『…』
なぜかまだ黙るあたし。
『あんたはやれば出来る子だよね。あれだけの宿題やってきたの誰?逃げないで頑張ったの誰?周りがなんて言ってもいいじゃん。行きたい高校くらい胸はって言ってみな』
『江の森にあたしは行きたい。』
あたしはつい言ってしまった。
もしかして乗せられているだけかもしれない。
それでもいいと思える何かをこの人は持ってる。
他の先生も受験とかは適当なのにこの人は違う。
すごく不思議だ。
『ちゃんと言えるじゃん。目標もあるじゃん。偉い』
なんで誉めてくれるのか不思議だけどうれしかった。
ほんとに不思議だ。
『じゃあ今日から受験までがんばろうな。俺は絶対あんたを江の森にいれるから!それが俺の目標。』
そう言ってこっちを見て笑ってた。
あたしもつい笑った。
そしてこの人を信じて勉強しようと思った。
こんな気持ちになったのは初めてだ。
頑張ろう。やろう。
なぜか、その言葉が頭の中を巡っていた。
でもこの時のあたしも先生も、先生がもうすぐいなくなることを知らなかった。