友香はプリンスを一目でも見ようとまた3年のいる4階に行き、ともはバイトだから先に帰ってしまった。
最近は、みんな色々と忙しいから4人で帰る機会が少なくなった。
今日は桜と。
…さっきから無言で歩いてるあたしたち。
なんか、、いつもと違う桜。
先に沈黙を破ったのはあたし。
「、、あたしもそろそろバイトしなきゃかな〜ともって大人だよね!フリーで毎日バイトだって!すごいな〜あたしも、」
「未来」
「?」
「桜、知ってるから教えて」
「?なにを?」
「大沢太陽くん、お兄ちゃんなんでしょ?」
「、、え…?な、なんで?」
「…気になってたから」
「さ、桜…?」
「恩人なの、、太陽くんは…」
桜から聞いたことは、
あたし達が引っ越ししてきて間もない時に(まだ入学もしていない)、桜は、顔も見たことのなく、親同士が仲が良く、ビジネス関係という理由で、斉藤勇樹(プリンス)と桜が16歳になったら婚約することを話されたらしい。
もちろん桜は嫌がった。
仕事しか頭にない父親
いつもひとりという寂しさ
もはや我を失っていて、裸足のまま家を出て、、、車の走る道路まで行ったという。
ボーッとしたように赤信号なのにも関わらず道路に向かって歩き出したらしい。
つまり、死ぬ決意までしたということ。
その時、たまたま通りかけたあたしのお兄ちゃんが桜を助けたらしい。
「どんなに辛いことがあっても、死んだあと、残された人はどーすんだよ。“生きる”から“死ぬ”までは一瞬だよ。けどな、残された人はそれを一生背負うことになるんだよ。ひとりが寂しかったら、信頼できる誰かを作っていけばいい。辛くて苦しい時には、楽しくて嬉しかった頃を思い出せばいい。簡単に諦めるな。」
「すごく胸に響いたな…、、名前も何も知らなかったけど…」
「すごい…偶然同じ学校になったんだね」
「…偶然じゃないの」
「え…?」
「太陽くん、少し言葉がナマってたから、東京の人じゃないって思って、性別、地方出身の人、だいたいの年齢をしぼって、最近引っ越してきた大沢家を探すことができたの」
「ど、どーやって?!」
「…パパの下の人に頼んでもらった」
「な、なるほどね…苦笑」
「…同じ高校に入って、すぐ見つけて…本当に嬉しかった。多分、太陽は覚えてないと思うけどね」
と言いながら桜は哀しそうに笑った。