チャンホの携帯電話が鳴った。
チャンホは、さっきまでとは明らかに違う、緊張した口調で相手と話し始めた。
しばらく話をした後で、チャンホがソンスンに携帯電話を差し出した。
「君に代わってもらいたい。」
ソンスンは、意外な申し出に、抜いたナイフを背中に戻し、チャンホから携帯電話を受け取った。
「もしもし・・・」
聞こえてきた声は、更に意外な声だった。
「あっ!」
ソンスンは、思わず驚きの声をあげた。
「私が誰なのか、名乗る必要はなさそうだね。」
何度も聞いた声だ。
海兵隊に在籍していた時は、ソンスン達、大韓民国軍の指揮を司る、最高責任者だった人間・・・。
「だ、大統領!」
「それ以上は言わないように。
私の部屋はクリーニング済みだが、何処で洩れるか判らないからね。」
ソンスンは、緊張と嬉しさが交錯した。
棟方を殺れる、最初で最後のチャンスだ。
「詳細はノ君から聞いた。軍での君の経歴やフリーランス以後の経歴も、リストアップしている。」
『ウンジュは全て報告していたんだ・・・』
ソンスンは、ウンジュに騙されていたような気持ちと、感謝する気持ちが絡み合い、複雑な表情になった。