「君の要求だが、実に驚きの内容だった。
率直に言って、君の要求は呑めない。」
ソンスンの表情が固くなった。
「たとえ、フリーランスの人間であろうと、一国の最高責任者の抹殺を容認する事は、テロを支持する某国と変わりがない。」
「お待ちください。」
ソンスンは意見を述べようとした。
「だがね・・・」
しかし、相手は先を続けた。
「まず、一つ、君に確認しておきたい。
彼をこの世から消しても、直ぐに第二、第三の彼が現れるのじゃないのかな?」
ソンスンは、その言葉をじっくりと聞き入れてから、質問に答えた。
「確かに、仰るとおりかもしれません。
しかし、今、やらないと、彼は更に増長し、我が国に更なる悪影響を及ぼすでしょう。」
「正論に近いが、それは君の私情だよ。」
低く、重い声がソンスンの心にのしかかった。
『私情・・・。そう言われれば、それまでだ』
「だが、事故はいつ起こるか判らないものだ。」
ソンスンは目を見開いた。
「私は君の要求を聞いて、一つの案が浮かんだ。
今から伝える事ができるかな?」
ソンスンは固唾を飲んだ。
「彼を抹殺する現場に、ニホンオオカミを呼び寄せる事だ。」