柳田は、逆にアイアンを失ったアイリーンに哀悼の言葉をかけた。
彼女は思った程、落ち込んではいなかった。
アイアンとアイリーンの人となりを知りたくて、馴れ初めを聞いてみて、柳田は驚いた。
彼女は元FBIの対テロ特殊捜査官だった。
アイアンが、コロンビアで負傷し、リタイアしてから間もない頃に、共通の知人の紹介で二人は出会ったそうだ。
結婚後、彼女はFBIを退職して、柳田がアイアンに与えた“アルバイト”程度の仕事の手伝いをしていた。
車が目的地に近付くと、今までの都会の風景から一変して、のんびりとした田園風景が広がり、いつの間にか、綺麗に手入れの行き届いた芝生が青々と続く、広大な邸宅の敷地の中に入っていた。
柳田がここへ来たのは、実は二度目だった。
自分の経歴を汚した、あの日以来二度目の訪問となった。
『まさか、また此処へ来るとはな・・』
柳田は、過去の苦い思い出がよぎらないように、気持ちを切り替えるのに神経を注いだ。
車が、屋敷の中にある停車場に着くと、執事とボーイ達が二人を出迎えた。
「ようこそ、お待ち致しておりました。ミスター・ヤナギダ。こちらは、ミセス・・・。」
「“ミス”よ。」