僕は自宅へと車をとばしていた。はやる気持ちを押さえ、開けることのない指輪の箱をにぎりしめ‥
『ねぇ、今日なんの日か覚えてる?』
玄関先まで追いかけてきたさおりに
「大丈夫よ!」
そうなだめて敦は会社へ向かった。
まぁ、女の子には重要なよくある【記念日】と言う日だった。
さおりには同棲三年目の記念日のつもりだろーけど、僕には人生一大事イベント、彼女流に言うと【プロポーズ記念日】になるのだ。
夕方、元カノのユリからの催促メールを見て敦は決心した。
元カノとは嫌いになって別れた訳ではなかったので、友達感覚で続いていた。
しかし、時折見せるユリのモトサヤねだりの事もあり、さおりとの結婚を報告し関係をすべて断つため会う事にした。久しぶりに会うユリにも興味があったのかもしれない。
残業のアリバイを頼んだ同僚からの
(さおりちゃん来たよ!残業言っといた!)
というメールが届き、泣きそうなユリにサヨナラを告げ、車を走らせた。
「さおり‥ゴメン‥」
僕は車を自宅へととばした。ありったけの愛の言葉を探しながら‥
病院へと変更されたボクの行き先。約束の時間にさえ帰っていれば‥
さおりのスベテを失った。
「バカだ‥オレ‥ゴメ‥ン」