期待した程派手な処刑でもなかった。
一瞬で引ちぎられた四跨や胴体は、すぐに傷口が収縮し、案外出血量は少なく、臓器が飛び散った分けでもない。
敢えて言えば、綺麗に地面に立った斉藤サツキの頭部が、見開かれた両目でこちらを睨みつけたままの状態で静止し、梅城ケンヤを少なからず動揺させたが、おりからのそよ風に煽られて
ゴロン
だるまみたいにあっけなく転がり、横になってしまった。
恐怖や戦慄よりも、ゲームや映画を見ている様な非現実感が校庭を覆った。
だが―\r
それでも生徒達は、公開処刑に熱狂し・興奮し・斉藤サツキには罵声を、梅城ケンヤには称賛を浴びせた。
そう、いつものように―\r
彼等は知らない。
熱狂しているのではなく、させられているだけと言う事を。
見せられているのは現実ではなく、現実を利用したショーであると言う事を。
自分達が参加し、支持していると思い込んでいる改革の正体とは、実は自分達を死に追いやる為の【計画】なのだと言う事を。
そのシナリオを書いた復讐鬼を【指導者】として仰いでいる事を―\r
ふん
おめでたい事だ。
相変わらずの愚鈍振りだな―\r
一斉にスタンディング・オベイションして来る生徒達に向けて生徒会役員全員が起立して応える中、梅城ケンヤは心の内で皮肉な笑いを浮かべた。
斉藤サツキは餌なんだよ。
おまえらをあやすための飴やガムだ
この俺の計画に気付かないためのな―\r
もちろん生徒達はそんな事に気付く分けもなく、いつも通り斉藤サツキの刑死体を携帯で取り始め、あるいはそれをバックに記念撮影をやりだし、挙句の果てにはパンやお菓子を食べ出した。
ふん、それで良い
梅城ケンヤはその進歩なき様子にご満悦だった。
―賢明な有権者など、正直ごめんだ
人間的に立派な有権者なんかいたら、俺の計画に取って最大の脅威になるだけだからな
まあ、この学校に関してはそんな心配すらないか―\r
夏場の死体はすぐ腐り、悪臭を放つだけではなく衛生にも悪い。
梅城ケンヤは携帯を開き、校舎脇に待機している清掃委員会と死体処理業者に指示を下すと、足早に会長室へと立ち去った。