龍と狼58

武藤 岳  2007-10-30投稿
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青年は、柳田のちょっとした躊躇を見逃さなかった。

「以前とお変わりありませんか?と言いたいところですが、お疲れのご様子ですね。」

「ええ、連日のテロのせいでね。」

柳田は、くたびれたスーツをジロジロと見る青年の好奇な目線に耐えていた。

「わざわざ遠い日本から、如何されたのですか?お仕事ですか?
それとも・・
また、お金が必要になりましたか?」

隣にいたアイリーンが驚いた顔をした。

“またお金が必要”

この言葉に反応したのだった。

「いいえ。お陰様でお金には不自由していません。」

柳田は淡々と話を続けた。

「今回は、仕事でこちらにやって来ました。
それで、少し、あなたにお会いしたくなったのです。」

ここから、青年と柳田のやり取りが日本語になった。

「以前、あなたとお会いしてから、もう九年、いや十年が経ちます・・・。
率直にお聞きします。
あれから、心境の変化などはありませんでしたか?」

「久しぶりにお会いしたと思えば、いきなり聴取ですか。
ええ、あの時、あなたとお会いした時と何も変わってはいないですよ」

青年は優しい笑顔を崩さなかった。

「そうですか・・」

柳田は話題を変えた。

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