あつし幹事のコンパは新宿駅近くの居酒屋で7時からに決まった。
新宿駅構内の時計を見ると、まだ5時半。ナオはいつものカフェで時間を潰すコトにした。
雑居ビルの2階にある隠れ家的なカフェをナオは気に入っている。BGM、店の内装、スタッフまでもが品の良い感じで、とても落ち着いている。
サトルからのメールをもう一度読み返し、
(急に彼女来ちゃったなら、仕方ナイよ。今日は友達と飲み明かすつもりだから気にしないで!)
精一杯の返信をしたと同時に入口の扉が開き、
「オーナーおはようございます。」
スタッフ達の爽やかな声が聞こえた。
入り口には、ナオとさほど年齢が変わらないくらいの青年が立っている。
これが、オーナー?マジで?!若っ。
見た目は中の上くらいだが、確かに服のセンスが店の雰囲気に合っている。スタッフ達とも親しげに話をする若いオーナーは、適当に指示をした後でさらっと店を出て行った。
あの若さでこの一等地にお洒落なカフェを持っているってことは、きっとぼんぼんに違いない。神様はいんちきだ。
ナオはなぜか劣等感に陥り、世の中の不公平さを身にしみて感じていた。
気がつくと7時10分前。急いで、居酒屋に向かった。
ギリギリ時間は間に合ったが、他の女メンバーは準備万端、かなりの戦闘態勢である。
ナオの顔を見るや、明らかに不快な笑顔で、
「あっくんから、友達来るってメール来てましたぁ〜。初めまして〜。」
…あっくん?あっ!あつしのことか。
「急に参加してごめんね!あつしに女が足りないって言われちゃってさ。」
「あっくんの友達なら全然OK。」
彼女達の演技はバレバレだったが、ナオが来てしまったせいで競争率が高くなったのは事実である。しかも、ナオはなかなかの美人。つまり招かれざるライバルが来たようなものだ。
結局、ガールズトークに入れなかったので、勝手に生中を頼んだ。
遅れてきたあつしが、
「先輩がちょっと遅れて来よって、こんな時間なっとた。すまんすまん!」
ものすごいテンションでやって来たあつしを見て、コンパ慣れしているなとナオは思った。
「紹介しまーす!俺の先輩でーす!!!今日は仲良く飲みましょ〜。」
あつしの後ろから今日の合コンの相手が出てきた。
その中の一人を見て、思わずナオは驚いた。つい先程までいたカフェのオーナーがいたのだった。