張り詰めた空気が流れる中、俺と松本はお互いを直視していた。
「中途半端な事、しないで欲しいですね…」
奴が何を言わんとしてる事は俺にもわかる。が、俺はあえて聞き返した。
「何に対して言ってるんだ?」
松本は険しい表情をする。
「アンタは知ってか知らないでか、アイツが泣いててもどうしようともしないじゃないすか」
(彩が泣いてる…?)
「……」
黙る俺に
「どーゆうつもりか知らねぇけど、見てられねぇんすよ!」
荒々しく言い放った。
確かに最近時間がなくて、構ってやれる事が減ってた。
けど、泣く程の事があったか?と俺は記憶の線を辿っていく。
そうしているうちに、相手は話を進めていた。
「アイツは俺が貰いますから…
それだけです」
松本は俺に背を向けこの場から出ていった。
パタン!
ドアの閉まる音だけ響いて周りは静寂に包まれる。
俺、何やってんだ?
アイツの笑った顔が見たくてこのバイト始めた筈だったのに…。
「泣かしてどーすんだよ…」
自分自身の腑甲斐なさで俯く。
しばらくはホールに戻る事が出来なかった。