「いいや違う。あいつらは日本人だ。日本の公安・・・スパイだ」
「日本人!?」
ソンスンの目つきがきつくなった。
やがて、両者が同じ場所に揃った。
真矢とチャンホは睨みあいを続け、ソンスンは柳田の顔を不思議そうに見た。
『何処かで見た事がある・・・』
ソンスンが、携帯電話を取り出そうとしたその時、柳田がソンスン達二人に英語で話しかけた。
「お宅ら、情報院の人間だろ?」
「・・・」
チャンホは無言だった。
「我々は日本の公安当局の人間だ。」
「柳田さんっ!」
とっさに真矢は、柳田の名前を出して叫んだ。
『柳田・・・?』
日本語の判るソンスンは、“柳田”という名前に反応した。
『確か、何処かで聞いた事があるんだが・・・』
そんな中、柳田は二人に話を続けた。
「あんた方もCIAのエージェントに、ニホンオオカミの件で呼び出された口か?」
「・・・」
チャンホは、まだ無言のままだった。
「約束の時間をとっくに過ぎてるのに、CIAの人間はまだ来ない。
そして、違う国のスパイ同士を、同じネタを口実に、同じ時間、同じ場所にブッキングさせた。
何か、おかしいと思わないか?」