生徒会長室の執務机に座りながら、梅城ケンヤは副会長・港リリアから差し出された書面に目を通した。
そして―\r
『やはり下がったか』
生徒達の最新支持率と、今しがた行われた斉藤サツキへの処断に対する緊急アンケート集計結果が印刷されたそれを見ながら、梅城ケンヤは呟いた。
『やはりこれは、一条フサエ事件が跡を引いたかな』
現在の支持率75%
50%割れも珍しくない他校からすればこれでも目もくらむような高数値の筈なのだが、今までのベスト95%と較べれば、実に20%と言う急落を示している。
致命的ではないが、ゆゆしき事態だ。
だが―\r
『いや、本来ならばこんなものじゃないかな?先の95%の方がどう考えても異常だ。今までの批判なき熱狂がようやく薄らいで、生徒達が冷静に時局を判断出来る様になって来たのならば、逆に【雨降って地固まる】じゃないか』
事実、この程度の低下は梅城ケンヤはとっくに見通していた。
また、だからこそ、斉藤サツキをネタにちょっとしたショーを企てて生徒達の歓心を買おうとしたのだ。
『ですが、一条フサエ事件に対する、これは有権者達からの警告でもあります』
両手を机に突いて、港リリアは柳眉をしかめて見せた。
『いくら支持があっても、強引かつ独善的なやり方を通す根拠にはなりません』
梅城ケンヤは破顔を禁じえなかった。
『これはこれは―俺の負けかな?やはり君の方がしっかりしている。いっそ君が会長をしていた方が良かったんじゃないか?』
『冗談は止めて下さい』
生真面目に否定する副会長をよそに、梅城ケンヤはアンケート結果の分析にかかった。
概ね好評だったがやはり多少大袈裟な演出に駄目出しする意見も少なくなかった。
『芝居がかっているか―まあ、確かに一芝居うったのは認めるが』
『私も好きではありません』
港リリアは辛口のコメントを続けた。
『処刑をゲームやスポーツと混同されてしまいます』
『うーん、だがねえ、民主制度に芝居はつきものだよ?』
書面を机に投げながら、梅城ケンヤは持論を展開した。
『事実ギリシャの昔から市民達を動かすのに演技や弁論術は不可欠だった』