「おう、来たか。まぁ座れや。」
僕は一瞬、躊躇した。最も生徒たちに恐れられている鬼教師、榊原が偉そうに座っていた。
しかし、こうなった以上早く済ませて帰りたかったので、僕は榊原の向かいの黒い二人用ソファに腰掛けた。
「おい甲斐、お前もさっさと座れ。」
その榊原の言葉で、僕は初めて窓の傍に立っている男子生徒に気付いた。
彼は振り返ると、少しの間榊原を睨みつけ、僕の隣にどさっと座った。
背が高く、手足が長い。顔立ちも良く、まるでモデルのようだと僕は思った。髪は金色に染められ、整髪料で無造作に立てられている。一般的に言う、“不良”というやつだ。
しかし、意外にもアクセサリーは左手首に付けられたミサンガだけだった。
遂に榊原が説教を始めた。
「今日、正当な理由もなく遅刻したのは全生徒中、お前たち二人だけだ。」
甲斐は全く聞いていないようだった。僕も途中から聞くことをやめた。しかし、榊原が僕と甲斐に、反省レポートを提出するようにと言ったとき、甲斐が突然口を開いた。