甲斐は何事もなかったかのように靴を履き替えながら言った。
「オレ、凌駕。お前は?」
「貴仁。」
他人とこんな風に話すのは、とても久し振りだった。
しかも、自分とは正反対な奴と話すなんて…。
まだ空は相変わらず、灰色の雲に包まれていた。
気付いたら、ある荒れた公園に来ていた。
「オレ、よくここで時間潰してんだ。」
そう言って、凌駕は錆び付いたブランコに腰掛けた。
「誰も来ねぇからさ、この公園。落ち着くんだ。こんなナリで公園なんて…笑っちまうだろ?」
「そんなことないよ。公園は“公の園”って書くんだから、誰が来たって構わないと思うけど。」
僕があまりに真剣に答えたのが面白かったのか、はたまた僕の言ったことが面白かったのか、凌駕は声を上げて笑った。
「そうだな、そうだよな。お前、今すっげぇ良いコト言った。」
「え?漢字を分析しただけだよ。」
そして僕らは、顔を見合わせて笑い合った。笑顔など、どれほど長い間忘れていただろう。
そして僕らは9時頃まで語り合い、一週間後に学校で会おうと約束して、帰路についた。僕は一週間後という未来が待ち遠しかった。
その夜、僕は興奮してなかなか眠れなかった。