隅っこに置かれたベンチに座り、朝コンビニで買ったおにぎりを食べようとしたとき、背後から僕を捉えた声が、おにぎりの寿命を延ばした。
「お、やっぱり貴仁じゃん。」
振り返ると、凌駕が笑顔で僕に手を振りながら近付いて来るところだった。
僕は何も言わなかった。まだ、今朝思いきり無視を喰らったことが引っ掛かっていた。
「悪かったな、無視したりして。」
どうやら僕は、考えが顔に出てしまっていたらしい。
少し恥ずかしく思い、僕は何と言って良いか分からなくなった。
「何で無視したの?」
ようやく出た言葉がこれだ。凌駕は、少し考えてから話し始めた。
「いや、オレなんかと関わったらさ、貴仁まで先公に目ェつけられるじゃん?それはヒデェなぁと思ってさ。」
僕は予想外の理由に驚いた。そして同時に、凌駕が自分をからかっていたなどと考えた自分が許せなかった。
「去年、先公殴って退学になった奴、知ってるか?」
「え?あ、うん。」
「あいつが退学になったの、オレのせいなんだ。」
「え…何で?」
凌駕は、僕に背中を向けるように立ち、フェンス越しに遠くを見つめた。