「なんかさぁ…多分なんだけど、相手の一部を停止させられるっぽい。」
「じゃあ、あのときは…」
「あぁ、お前の声帯を止めたんだ。」
僕は、またしても開いた口が塞がらなくなった。凌駕の能力が、僕の理解の範疇を越えていることは明らかだったが、僕の好奇心は沸騰寸前だった。
「どうやって停止させるの?」
「止めてぇ部分に集中して、念じるんだ。」
僕はしばらく凌駕を質問攻めにした。僕らは話に夢中になりすぎて、とっくに昼休みが終わっていたことに気付かなかった。
僕らは、午後の最初の授業の終わりを告げるチャイムが鳴って初めて、自分たちがどんなに長い時間話し込んでいたかに気付いた。
「うわぁ…授業サボっちゃったよ!」
僕は妙に嬉しくて、声を上げて笑った。凌駕は複雑な表情をしていたが、僕の喜び様を見て笑った。
僕はおにぎりを胃袋に詰め込み、ずっと心にのしかかっていたことを吐き出した。
「僕は…もし万が一凌駕が原因で退学になったとしても、後悔なんてしないよ。」
凌駕は一瞬僕を見て、すぐにそっぽを向いてしまったが、口元が微笑んでいた。
少し黙って遠くを眺めてから、僕らはそれぞれ、その日最後の授業に戻った。