冬桜 ?

モンブラン  2007-11-02投稿
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澄んだ空気
震わす音色
透明に淡い黄色を浮かべたみたいに

ほどよい風
全身で受ける
吐き出す息の全てを音と言う振動に変える

「山村クン?そこ違うくない?」同じパートの女子が譜面を指しながら言った。
「ん?悪りぃ」
適当に答えてから、また窓から空を見上げる。
もう日が沈みかけて空の半分をオレンジに染める。
ふと、桜が教室で誰かと話しているのが目についた。
一人で待ってるとばっかり思っていた冬夜は、急に誰と話しているのか気になってどうしようもなくなった。
「何か体調悪いから今日は早退させてもらうわ」
冬夜はそう言いながら、周りの言葉も聞かずさっさと楽器を片付けて桜の教室に足早に向かった。
ちょうど教室の前に着いたとき、桜が飛び出してきた。
「おわっ!」
「…!!」
桜は一瞬何か言おうとしたが走り去ってしまった。
「涙…?」冬夜その一瞬でも桜の涙を見逃さなかった。教室には男が一人顔を真っ赤にしながら吊っ立っていた。胸がチクリと痛むのを感じながら冬夜は桜を追いかけた。
桜は冬夜のクラスにいた。
冬夜は桜の涙への混乱とさっきの教室での光景への不安で自分の感情がわからなくなっていた。
「桜…?」
名前を呼ばれ体をびくつかせながら桜が振り向いた。
「ごめん…」
桜の言葉で冬夜の中で何かが砕け散った。「…なんだよ。なんでお前が謝んだよ!なんで泣いてんだ!?さっきのやつは誰なんだよ!?」力任せに怒鳴る冬夜に桜は寂しそうに答えた。
「あの人は部活の先輩……さっき急に告白されて……私、ビックリして逃げてきちゃったの……冬夜…どうしたらいい?私、わかんないよ…」
桜は泣きながら冬夜の腕を掴んだ。冬夜はそんな桜を見て悔しくて、自分が情けなくて、自分の気持ちがぐちゃぐちゃになるのがはっきりとわかった。
冬夜にとって桜は子供のころからずっと一緒だった幼なじみ。いつも、明るく強かった。泣いてる姿は一度も見た事がなかった。
桜は冬夜にとって大切な場所だった。だからこそ、今の桜が自分の思っていた桜とまったくの別人に見えてしまう。そんな桜が許せず、全てを知っていたつもりだった自分がもっと許せなかった。
「………。知るかよ…。お前の事なんだろ!?知らねぇよ!俺に聞くなよ!!」
『パシッ!!』
瞬間、時が止まったようだった。



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