それから数週間が経った。
僕らは毎日屋上で語り合い、廊下でも人目など気にすることなく語り合うようになった。
しかし僕は、やはり凌駕以外の人間とは関わる気になれなかった。それは凌駕も同じのようで、凌駕は嫌味を言う教師連中以外からは話し掛けられることもなかった。
しかし、そんなことはどうでも良いくらい、二人で過ごす時間は楽しいものだった。
ある休日の夕方、僕は散歩に出掛けた。冬なので、夕方とはいえ既に辺りは暗く、空では星たちが囁き合っていた。
無意識に歩いていると、いつの間にか凌駕のお気に入りの公園に来ていた。凌駕はいなかったが、僕はブランコに腰掛けて物思いに耽ってみた。
数分後、僕は自分の耳が正しく機能していないことに気が付いて目を上げた。
すると、隣のブランコには凌駕が座っていた。
「凌駕…!」
僕はこう言ったつもりだが、自分の声は聞こえなかった。凌駕には聞こえていたようで、凌駕はくすっと笑い、僕の耳に触れた。すると、初めて出会ったときのように、凌駕の掌から白い光が出た。
「遅ぇよ、気付くの。」
凌駕の声は、もう普通に聞こえた。凌駕は明るく言ったが、どこか悲しさを帯びた声に思えた。