「公園近くまで来たら、CIA本部で見た覚えのある奴がいてね、““もしかしたら”って思って、こんなの用意しちゃったわよ
もちろん偽造だけど」
アイリーンはそう言うとFBIの身分証を見せた。
柳田はそれを手にすると、アイリーンに言った。
「アイリーン、君は“元”FBIと言っていたけど、実は“現役”なんじゃないのか?」
「違うわよ!“元”FBIよ」
アイリーンは少し早口になっていた。
「アイリーン、君は以前からケビンをマークしていたんじゃないのか?
だから、ケビンに接触する機会のあるアイアンに近付いたんじゃないのか?
彼は・・・、
“元”CIAだからな。」
ルームミラー越しに見えるアイリーンの目つきが変わった。
「今の一件で判った。もうCIAは使えない。オオカミとの内通者がいる。
いや・・・、CIA自体が敵かも知れない」
「何故、そう言える?」
柳田の隣に座って、今まで無言だったソンスンが間に入った。
「昨日、見たんだよ。」
「何をだ?」
ソンスンが身を乗り出してきた。
「普通なら、いるはずのない場所に、米軍機が集結している現場をな」
「米軍機とは、何だ?」
「アパッチだ」