「あんた、俺と手を組まないか?」
ソンスンに衝撃的な言葉がかけられた。
日本人と手を組む・・・
考えた事もなかった。
そもそも、ソンスンの目的は、日本国の総理大臣、棟方肇の“暗殺”である。
ソンスンは躊躇した。
その躊躇ぶりを見て、柳田は言った。
「あんた、NISの“イリーガル(非正規局員)”だろ?」
ソンスンは、柳田を睨みつけた。
「怖い顔するなよ。
判るんだよ。そのくらいの事は。
何故だか言ってやろうか?
俺もイリーガルだからだよ。」
「どういう事だ?」
ソンスンは、自分の事を判ったように話す柳田に怒りを覚えた。
「どんな仕事だって、クサい仕事は、正規雇用の人間はしたがらないって事だよ。
軍人あがりを起用するってのは、そう言う事だ。
あんた、もしかして、ドサクサに紛れて、うちの総理大臣狙ってないか?」
柳田は半分、本気の笑顔になった。
しかし、ソンスンは、そんな柳田の態度が許せなかった。
「あんたは、日本のスパイだろ?何で自分の国の総理大臣に、そんな事が言えるんだ?」
柳田は、想定外の事でソンスンが怒りだしたので、びっくりしていた。