「でも、お前のことは信じられるんだ。何でだろうな?」
僕は何も答えなかった。自分が世界一不幸だと思い込んでいたことが情けなかった。
「もし、オレのせいで貴仁が死んだら…オレも死ぬ。」
僕は立ち上がり、凌駕の肩を掴んだ。あまりに突然掴んだので、凌駕は驚いて目を見開いた。
僕は、また泣いた。凌駕は、あまりに優しすぎるが故に、誰よりも傷付いてきたのだ。
「僕が死んだら、凌駕は僕の分まで生きてよ。凌駕が死んだら、僕は凌駕の分まで生きるから…」
凌駕は、嬉しいやら悲しいやら複雑な表情をした。
「でも、まだ僕らは死なないよ。今までこれだけ暗い道を歩いてきたんだ…どうせ死ぬなら、明るい場所に辿り着いてから死にたいよ…」
凌駕の目から、一粒の涙が雫れ落ちた。凌駕は慌てて拭い、微笑んだ。
「そうだな…お前また、良いこと言った。」
凌駕も立ち上がり、僕の背中を、ぽんぽんと叩いた。
日が暮れるまで泣き続けてから、僕らは別々の道を歩き始めた。
いつもより少しだけ美しく見える空を見上げると、白い羽根のような雪が舞い降りてきた。
もう凌駕の姿は見えなかったが、僕らは同じものを見ている。確かにそう感じた。