僕には分かる。
凌駕は、この世界で僕以外に自分の味方をしてくれる人間がいることを試したかったのだ。
「まぁ良い。お前、烏丸高校のモンだな?お前を連れていく!」
他校生は、榊原に引きずられて出ていった。
凌駕はすぐに僕の喉を解除した。
「悪かったな。」
すると、少年がおずおずと凌駕に話し掛けた。
「あの…助けてくれて、ありがとうございました。」
最後の方は聞こえなかったが、恐らくこう言った。
凌駕は少年の頭に手を置き、礼はいらないから保健室に行けと言った。
少年はもう一度礼を言ってから出て行った。
僕は凌駕をかばった女子生徒に、何故見ていないのに事情が分かったのか尋ねてみた。
「なんとなく…」
彼女は顔を真っ赤に染め、消え入るような声で呟いた。
「ありがとな。」
凌駕のこの言葉が、彼女を耳まで赤くしてしまった。
他の二人の女子生徒は、声を押し殺して笑っていた。
その日から、少年と彼女たちはしばしば僕らと話すようになった。
少年は順也、凌駕をかばった彼女は裕実、他の二人は桜子、美雪というそうだ。
僕らの世界は少しずつ変わり始めた。そして僕らも少しずつ、しかし確実に変わり始めていた。