ある昼休み、僕はいつものように屋上への階段を昇っていた。
突然、屋上の扉が開き、裕実が駆け降りてきた。
僕は慌てて避け、裕実は僕の脇を通り過ぎて行ってしまった。僕には裕実が泣いていたように見えた。
屋上には、凌駕がぽつりと立っていた。どうやら、裕実を泣かせたのは凌駕のようだ。
「凌駕、何があったの?」
すると凌駕はしゃがみ込み、うつ向いて口早に事の経緯を話した。
裕実が凌駕に想いを伝え、凌駕は裕実を振った。
理由は簡単だ。
凌駕は昔の彼女のことを、まだ想い続けていた。
凌駕の父の手によって引き裂かれた想いは、長い時間をかけても消えることはなかったのだ。
僕は裕実を追い掛け、体育館の裏で座り込んで泣いている裕実を見つけた。
裕実は、僕に気付くと急いで涙を拭った。
僕は言葉を探しながら、裕実の隣に座った。しばらくの沈黙の後、僕はとうとう意を決して単刀直入に切り出した。