「凌駕は多分、裕実ちゃんのこと嫌いじゃないと思うよ。好きかどうかまでは分からないけど。」
「ほんと…?」
「うん、絶対だよ。」
僕には自信があった。凌駕は、好きじゃない相手には謝ったりしない奴だ。
「だから、凌駕のことを嫌いにならないであげてほしい。」
「…うん。きっと私は、死ぬまで甲斐くんのことが好きだよ。」
裕実は微笑んだ。僕は、“恋する女性は美しい”というのは本当なんだなと思った。
次の日、裕実は凌駕に“友達でいて下さい”といったことを願い、二人の関係は以前と同じ状態になった。
それから数日間は、何だかよそよそしい態度だったが、いつの間にか自然な空気になっていた。
どうかこの何気ない平穏の時間が、一瞬でも永く続きますように…。
僕は青空に向かって祈った。