「人生には三度、モテ期があるんだってよ。」
帰り道、急に凌駕が言い出した。裕実の一件の影響だろうか。
そのとき、脂べっとりの太った秋葉系の男とすれ違った。
「有り得ないよ。」
凌駕はともかく、今の男にモテ期は来ないだろう。
交差点を通りがかったとき、妙な人だかりを発見した。
轢き逃げよ、と主婦らしきおばさんが話しているのが聞こえた。スーツを着た男が、携帯で救急車を要請している。
僕らは、道路の真ん中に倒れている少年を見た。
血みどろだったが、それは紛れもなく…
「順也!」
僕らは駆け寄り、揺さぶった。
順也は意識がなく、呼吸も浅かった。
応急処置の知識があまりにも乏しい僕らは、何も出来ずにただ順也の名前を呼び続けた。
そして、到着した救急車に共に乗り込み、病院へと向かった。
手術室の前の椅子に座って待っていると、順也の母親らしき女性が駆けてきた。若くて綺麗な人だ。
僕は軽く会釈をしたが、凌駕はうつ向いたまま動かなかった。