数ヶ月後、凌駕と裕実は付き合い始めた。
凌駕の周りの人間が死ぬことはなくなり、凌駕はいつも笑っていた。
毎週、順也の墓に行っては、他愛のないことを話して笑った。
もちろん、順也が喋るわけはないが、僕らには順也の声が聞こえる気がした。
僕らは同じ大学に進み、凌駕は髪を茶色にした。理由を訊いても答えなかったが、僕にはなんとなく分かる気がした。
久々に立ち寄ったあの公園で、どちらがブランコをより高く漕げるかを競ってみた。
勝者は凌駕。
凌駕は、昔から一人でここに来ては、ブランコを漕いでいたのだ。
しかし凌駕は、おかげで勝負に勝てて良かったと笑った。
「オレの能力って何のためにあるんだろうな?」
「誰かを守るためじゃない?」
「え、何?そのクサい台詞。」
確かにクサい台詞になってしまったが、僕は間違いなくそうだと思う。
無意識だったのかもしれないが、凌駕はいつも、その能力で誰かを救っていた。
「…ありがと。」
「え?何て?聞こえねぇ!」
「…もう言わない。」
「何だよ、それ!気になるじゃん。」
凌駕は僕の全てを変えてくれた。
あの忌まわしい夜の記憶が消えることはないだろうが、あの夜があったからこそ、僕は命の重さを知った。
あの夜がなければ、僕は凌駕に出会うことはなかったかもしれない…
そう思うと、少し晴れやかな気持ちになった。
僕らは一人じゃない。不幸でもない。歩いていく中で、きっと同じだけの幸福が待っている。
こんなにも世界は美しかったんだ。僕らは、色んなことを乗り越えて、今やっと気が付いた。
人は変わる。
自分では気付かぬ内に、良くも悪くもなっていく。
辛いことはいつか過ぎ去るよ。だから、じっと待ってみて。
独りだなんて、思い込まないで。誰かが君を見ているから。
命にはやがて終わりが来るけど、終わりがあるから輝ける。
幸せを見付けたら、大切な人に分けてあげよう。
そうやって少しずつ少しずつ、あの星たちのように繋がっていくんだ。
そう、僕らは。