セイングレンド?

那門 秦  2007-11-04投稿
閲覧数[379] 良い投票[0] 悪い投票[0]

グルーク大公国本国作戦司令部執務室に二人の男がいた。
「連合国軍は現在ハンサン基地において新型N・Kを開発しているとの情報が入った」
机に肘をつきながら、金の髪を後ろで一つに縛っている男が、癖の有る緑色の髪に丸眼鏡をかけた痩せ身の男に言った。
「情報の出所は何処なのです。ロスカット中将?」
痩せ身の男がロスカットという男に尋ねた。
「潜入中のコラン少尉からの情報だ。彼は信頼に値する男だろう。違うかね、バリス少佐?」
ロスカットはバリスをその優しい碧眼で見据えた。
「いえ、彼は信頼に値する男です」 ロスカットは微かに笑うと、また真剣な目つきになった。
「それでは作戦を説明しよう。本作戦の最重要目的はハンサン基地における敵新型機の奪取もしくは破壊である。アイアンウルフ小隊以下二小隊での任務となる。敵機と交戦し破壊もままならない場合は戦闘データだけでも採ってこれればいい。ハンサン基地における敵戦力は不明。現在コラン少尉に調べてもらっているが表面的なものしかわからんだろう。…二小隊での作戦だ。工作に失敗した場合敵の数に圧倒されるかもしれん。危険な作戦だが…頼んだぞ」 ロスカットは頭を下げた。部下に頭を下げる上官はまずいないだろう。しかし、ロスカットは誰よりも部下思いの男なのだ。 バリスは踵を返し「頭を上げてください中将。アイアンウルフはそう簡単にはやられません。敵の新型、奪取してみせましょう」
そう言残すと執務室を後にした。
「少佐、作戦ですか?」
執務室を出た所で部下の一人に呼止められた。
「そうだ…サクロ少尉」
茶色の髪を肩まで伸ばし、軍服の前を開けて着ている若い青年。サクロは部下達の中で一番若い。若さ故か時折戦場で死に急ぐ様に見えてしまう。一番心配な部下だ。
「今回はかなりの危険を伴う。生きて戻れるかもわからん作戦だ。だが…誰も欠ける事なく帰ってきたいものだな」
そう言残し、両側に電灯が付けられた通路を抜けて、自分の部屋へと入った。
部屋に入ると大きめのソファーに腰掛ける。
――誰も欠ける事無く…戻ってくる。
バリスは自分にいい聞かせる様に同じ言葉を繰り返した。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 那門 秦 」さんの小説

もっと見る

SFの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ