彼の恋人

高橋晶子  2007-11-04投稿
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周りを見渡すと、誰一人としてトイレに出る観衆はいない。関心の程に納得せざるを得ない。
午前10時に始まったディベートは、既に1時間を越えている。長く感じられる程中身の濃い時間を味わったのは、受験勉強以来か?
ディベートで展開されるのは、近辺の公立高校の定時制を統合して新設される定時制高校のあり方だ。
少人数教育を売りとする単位制の高校になる事は既に決まっている。その中身についても様々な意見が交わされる。
「職業基礎能力(SPI)やYESプログラムを総合学習に取り入れて、『就職予備校』として開き直るのも一つの方向性だ」
「プロを招いてヘアメイクやネイルとか、生涯学習にも使えそうな講座を用意して、地域との繋がりを確保して欲しい」
「単位の取り方によっては3年で卒業できるようにして欲しい」
今の定時制高校のトレンドが反映された教育が提供されそうだ。
「旧青海高校の校舎を改修して、バリアフリー対応になるのが楽しみだね」
博文は思わずときめかせる。
「今の青海高校は、農工高校の校舎をそのまま使ってて、商業高校は校舎を福祉施設に転用する案が出ているよ」
臨は情報が早い。
「どっちも利便性が良いから、跡地活用をしなきゃ勿体ないよ」
千聖は合理的な性格を覗かせる。
白熱の約90分が終わった。観衆はぞろぞろと会場を後にする。
ディベートに参加した佳純がマスコミの取材を受けている。卒業生や地域住民の意見を取り入れられて、新しい学校のビジョンが見えてきた事で手応えを掴んだようだ。
文化祭のために一般開放している食堂で、博文達が久し振りに集結した。その場に亜鶴・州和・彩子・祥恵の青海組はいないが。
「青海は今日から修学旅行なんだ。今は複数の研修先から1ヵ所選べたりできるらしいけど……」
佳純は手弁当を頬張りながら裕介の話に頷く。
千聖が、午前中は催し物の応対をしていた裕介と孝政にディベートの資料を見せた。裕介も孝政も、新しい定時制高校のビジョンに興味を示す。
さて、1日目に裕介と青海組が見に行ったコスプレ写真コンテストだが、孝政のオッサンぶりが大ウケし、1位の女装ゴスロリと競り合う結果になった。
孝政の写真は、裕介の携帯電話の待ち受けに……。

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