だがー
梅城ケンヤとて、いつまでも冗談めかしている分けには行かなかった。
『所で副会長―私立k学院についてだが』
やはり、気になる。
穏健派・特にその指導者九重モエの動向が―\r
『やはり、外交的努力で和平を試みるべきだろうか』
『ええ、もちろんです』
港リリアは一も二もなく賛同した。
『前門の狼・後門の虎のままではいくら我々の勢力が強くとも、いつかは息切れしますわ』
難しい言い回で、副会長はそう提言する。
最も、梅城ケンヤの腹は八割方固まってはいた。
『では向こうと交渉しよう―君がその責任者になってくれ』
『わ、私がですか!?』
シルバー色のブレザーの胸の辺りに手を当てて、港リリアは驚きと戸惑いを示した。
『そう言うのは渉外委員会が担当すべきでは―』
『だから、君が渉外委員会を率いて私立K学院に当たるんじゃないか』
梅城ケンヤはたしなめる様に説明した。
『いえ、それは、分かりますが―』
港リリアは面喰らっていた。
有能な彼女からしても、梅城ケンヤの決断力・構想力の素早さ奇抜さは、時として理解を越える事がある。
『私に全てを統括せよと?』
『これは最重要事案なんだ。だからこそ本校ナンバー2の君でないと出来ない仕事だよ?第一、向こうの生徒会長と直接交渉するのに、一般の役員では失礼じゃないか』
確かに異例の措置だが、梅城ケンヤからすればむしろ当然の人選らしかった。
『嫌なら仕方がないがね―その時には私が出向くから。だがね、今は校内情勢もいささか微妙だから、私の代わりに校内を治めて欲しい。どちらかやりたい方を選びたまえ』
梅城ケンヤはやや挑発的に副会長に選択を委ねた。
『いえ、やらしていただきます』
プライドを刺激されたらしく、港リリアは即断した。
それを聞いて梅城ケンヤはほっとした感じで笑顔を見せた。
『そうか―いや、良かった―私はあそこの会長が苦手でね?ここはやっぱ女子生徒同士の方が何かと上手く行くんじゃないかとね―まあ実際、九重会長は君と面識があるし、信用されてもいるみたいだから、ここは一つ君に頼む』
『女子生徒同士うんぬんについては不服です。そんなのは根拠になりません―ですが必ず期待には応えます』
そう言うとやや怒った様子で、港リリアは会長室を後にした。