従者の心は

葉月  2007-11-04投稿
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ただ飛び散っていく血が汚らしくて、頬に付いた生暖かい液体を手の甲で拭った。
「・・・・汚い」
その呟きは自分自身を否定する言葉でもあり、こうしなければ生きられない世界の意でもあった。

「クラン」

「キルト」

血に塗れた同い年の少年はそいつが賊の頭だぜと、俺の足元に転がる死体を指差した。

「・・・・こいつが?」

「ああ。他よかちょっとばかし強かったろ?」
「・・・・・いゃ?」

幾人斬ったかなど数えはしないが、どいつも強さは同等だった。ただ剣を振り回して自分は強いと、主張しているみたいで気に食わなかった。最後に斬った奴もなんら変わりのない奴で、頭はキルトが斬ったのかと思ってたくらいだ。

「お前強いからなー。」
キルトが笑う。
お前のほうが強いじゃないか、相手に言葉を返しながら、一応賊の親玉の首に刃を当て下へと降ろす。
ざしゅと首の切れる音と共に血が吹き出てきて、顔に服にかかった。

「こいつだけか?」
「あぁ。・・・その首1200ルートだってよ。」
「まぁまぁだな。」

とりあえず半月は不便無く生活できるだろう。
髪を引っ張り2、3回振ると流れ続ける血が少しずつ止まる気配を見せる。

「・・・どうする?」
賊を追いかけ山に上ったはいいが、今はもう日が暮れ始めている。
何かを考えるように視線を泳がせ、俺の問いにキルトは答えた。
「まあ、暗闇に山を下るなんていいことはないぜ?」だからといって、その首と一夜をともにするなんてまっぴらだけど。

「下る道から外れた方がやっかいだ。」

「・・・、やっぱり野宿か」
軽いため息と頭を掻く仕草から野宿の覚悟ができたらしい。

結局その日、山の奥で薪を集め火を炊いて、木に寄り掛かりながら瞼を落とした。



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