ただ飛び散っていく血が汚らしくて、頬に付いた生暖かい液体を手の甲で拭った。
「・・・・汚い」
その呟きは自分自身を否定する言葉でもあり、こうしなければ生きられない世界の意でもあった。
「クラン」
「キルト」
血に塗れた同い年の少年はそいつが賊の頭だぜと、俺の足元に転がる死体を指差した。
「・・・・こいつが?」
「ああ。他よかちょっとばかし強かったろ?」
「・・・・・いゃ?」
幾人斬ったかなど数えはしないが、どいつも強さは同等だった。ただ剣を振り回して自分は強いと、主張しているみたいで気に食わなかった。最後に斬った奴もなんら変わりのない奴で、頭はキルトが斬ったのかと思ってたくらいだ。
「お前強いからなー。」
キルトが笑う。
お前のほうが強いじゃないか、相手に言葉を返しながら、一応賊の親玉の首に刃を当て下へと降ろす。
ざしゅと首の切れる音と共に血が吹き出てきて、顔に服にかかった。
「こいつだけか?」
「あぁ。・・・その首1200ルートだってよ。」
「まぁまぁだな。」
とりあえず半月は不便無く生活できるだろう。
髪を引っ張り2、3回振ると流れ続ける血が少しずつ止まる気配を見せる。
「・・・どうする?」
賊を追いかけ山に上ったはいいが、今はもう日が暮れ始めている。
何かを考えるように視線を泳がせ、俺の問いにキルトは答えた。
「まあ、暗闇に山を下るなんていいことはないぜ?」だからといって、その首と一夜をともにするなんてまっぴらだけど。
「下る道から外れた方がやっかいだ。」
「・・・、やっぱり野宿か」
軽いため息と頭を掻く仕草から野宿の覚悟ができたらしい。
結局その日、山の奥で薪を集め火を炊いて、木に寄り掛かりながら瞼を落とした。