朝礼が終わり、最初の授業はコンピュータルームで行われる。
六年三組の教室は南館の2階、コンピュータルームは北館の3階にある。つまり真逆の位置だ。
また、先程の朝礼が長引いて、本来なら10分ある休み時間が5分になってしまった事もあり、クラスの皆は遅刻しないように大慌てになっていた。
しかしそんなことお構いなしに喋っているのは魁達だった。
「なあなあ、アキラぁ。」
という魁の呼び掛けはもう一人の親友の三沢 明(アキラ)に向けられたものだった。明は二学期になってから眼鏡をかけて来ていた。それが魁と渉にはものすごく頭がいい人に見えた。
「何だよ?魁。」
「さっき聞いたんだけどさあ、この学年に転校生が来るんだって。」
「それ本当かよ!?おい、渉。お前知ってた?」
「・・・。」
明がそう聞くも、渉は窓の外を見ながらうなだれていた。ハァっとため息が出た。
「おい、渉。聞いてるのかよ。」
すると、渉が口を開いた。
「外見て。誰かがやって来るよ。」
えっ・・・!?
魁と明は窓の外を身を乗り出すようにして見た。
すると確かに誰かいる事がわかった。
一人は大人、もう一人は女の子か?もしかして・・・・
そう思った矢先、魁はあることを閃いた。
「ちょっと下まで見に行かないか?」
その突発的な言葉に明と渉の二人とも驚いた様子はない。きっと魁がそう言うことを予想していたのだろう。
「しかたないなぁ。じゃあ行くか!」
そして三人は授業の行われるコンピュータルームとは逆に走り出した。
9月にしてはまだまだ暑い日の出来事だった。