「よし!いっちょ行きますかぁ!」
ノブオは気合いと共に玄関を飛び出した。
春だと言うのに外はまだ冷たい風か吹き付けていた。
しかしノブオにとっては最悪の朝を迎えた家にいるよりも この少し冷たい風に立ち向かう自分が妙に気持ち良かったのだ。
「まずは…何を食べるかだよな、ちくしょう…金額が金額だけになぁ…」
ノブオが朝食のメニューを あれこれ考えて歩いているとコンビニ前の交差点まで既に辿り着いていた。
「募金お願いしまーす 募金お願いしまーす」
交差点ではノブオと差ほど年齢が変わらない位の女の子達が何やら募金活動をしていた。
(おい、おい待ってくれよ 募金なんて言ったって俺がして欲しいくらいだからな)
ノブオは 明らかに不自然な面持ちで鳴ってもいない携帯で一人芝居を始めた。
「募金お願いしまーす募金お願いしまーす」彼女達は風がまだ冷たいせいもあって 口元に手を覆って息をはぁはぁかけながら それでも精一杯大きな声で募金を呼び掛けていた。
ノブオは少しだけ心が傷んだが、自分の立場上 素通りするしか無かった。
「ああ…お…俺だよう…ああ…うん…おおっ…へぇ…」
相変わらずの下手くそな芝居で やり過ごそうとしたその時、聞き慣れた声がノブオを呼び止めた。
「あれ?ノブオ君?ノブオ君だよね?」
ノブオは青ざめた…。
つづく…